証 道 歌 
[十]栴檀林せんだんりん

 栴檀せんだんの林雜樹無し 栴檀林せんだんりんには雜木ぞうきは生えず>
 鬱密深沈うつみつしんちん師子のみ住す 鬱蒼うっそうと繁り獅子が住む>
 境静かに林しずかに独自に遊ぶ <独り静かに晴耕雨読せいこううどく
 走獣飛禽皆な遠く去る 五月蠅うるさ奴等やつらは遠くへ去って>
 師子兒衆ししじおおく後に随い <多くの眷属従えて>
 三歳即能そくよく大いに哮吼こうく <三歳にして獅子吼ししくして>
 若し是れ野干やかん法王逐えば 狐狸こりが法王追随しても>
 百年妖怪虚しく開口 <百年俗学一句も出せず>
 円頓教えんとんきょうには人情は 頓悟とんごの教えにゃ俗情は無し>
 有疑うぎ不決ふけつは須くじきあらそえ <決着つかぬ掛かっておいで>
 是れ山僧人我たくましきにあら <私見の独断ではないぞ>
 修行恐らく断常のあなに落つ <二見のあなに落るを恐れる>
 不非ふひ不是ふぜ 不非ふひ不是ふぜで>
 之れ亳釐差ごうりたがえば千里も失す の思量が千里をつ>
 是即龍女頓成仏ぜそくりゅうにょとんじょうぶつ これを認めりゃ龍女も成仏>
 非即善星ひそくぜんしょう生きて陥墜かんつい <認めなければ生き地獄>
 吾れ早年来そうねんらい学問を積み <若い頃から学問重ね>
 亦た曾てたずね経論を尋ね <注釈経論読みあさり>
 分別名相休するを知らず <学問研究し続けて>
 海に入り沙算えいたずら自困じこん <無駄な努力に明け暮れた>
 却って如来ににが呵責被かしゃくさ <如来にひどく叱られた>
 他の珍宝数えて何の益有ると <他人の宝を盗むじゃないと>
 従来樣樅虚行そうとうこぎょうさと <迷った虚しい修行であった>
 多年むなしく風塵ふうじんの客と作る <風来坊の年月じゃった>